世界初の「長野モデル」
国立研究開発法人国立成育医療研究センターは7月30日、同センターの厚生労働科学研究班グループが長野県長野市の母子保健関係者と協働し、世界初の妊産婦の自殺予防地域母子保健システム「長野モデル」を開発したと発表した。
研究論文は、国際学術雑誌「BMC Psychiatry」に掲載された。
自殺念慮等が改善
国立成育医療研究センターの人口動態統計の分析研究によれば、2015年~2016年の妊産婦の身体的な原因による死亡は74名だが、自殺が1位で102名にも上った。自殺の原因は、産褥精神病・産後うつ病などが多く、自殺予防対策は喫緊の課題である。
自殺の原因の多くは、早期発見・早期治療により予後が良好な疾患である。よって、早期発見・早期介入システムを確立すれば、母子ともども救うことができる。
長野モデルでは、保健師が新生児訪問時、最初に全ての母親に対しエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)を使用し、自殺念慮(自殺を考えること)のアセスメント(評価)を行う。
自殺念慮を認めた場合は、「TALKの原則」の手法を応用した心理的危機介入を行い、保健師・精神科医・産科医・助産師・看護師など多職種のチームでフォローアップする。「TALK」とは、Tell(伝える)、Ask(尋ねる)、Listen(聴く)、Keep safe(安全を確保する)の頭文字である。
研究グループは、長野県長野市に2015年11月~2016年3月の間妊娠届を出した母親230人を対象群とし、2016年4月~2016年7月に妊娠届を出した母親234人を介入群としてプログラムを実施した。
その結果、産後の母親の自殺念慮と産後のメンタルヘルスが統計的に有意に改善し、有効性が実証された。
長野モデルは、世界で初めての産後自殺予防対策プログラムになるという。
(画像はプレスリリースより)

国立成育医療研究センターのプレスリリース
https://www.ncchd.go.jp/別掲
https://www.ncchd.go.jp/press/20200730.pdf