歯の喪失と抑うつとのメカニズムを解明
東北大学は4月16日、歯の喪失と抑うつとのメカニズムを明らかにしたと発表した。
歯19本以下は抑うつ発症リスク1.30倍
高齢者においては、抑うつと歯の喪失が重要な健康問題となっている。
過去の研究では、抑うつの発症には人とのつながりなど社会的な要因が影響しており、歯の喪失により社会的な機能の低下を招き抑うつ発症につながるとの関係性が示唆されているがそのメカニズムは不明であった。
研究グループは、2010年時点で抑うつ状態にない要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象に、3年後の2013年時点での歯の本数と抑うつ発症との関連を追跡調査した。
抑うつ状態は、高齢者用うつ病尺度(GDS-15)で評価し15項目中5項目以上の該当者を「抑うつあり」とした。歯の喪失と抑うつ発症との関係性は、因果媒介分析という統計学的手法を用いた。
口腔機能の社会的な機能低下の媒介変数として、「うまく話せない(発音問題)」・「歯を見せて笑うのをためらう(表情問題)」・「咀嚼困難な食べ物がある(食事問題)」の有無の3つを用いた。
また調整変数として、性別、年齢、教育歴、等価所得、喫煙歴、独居、婚姻歴、併存疾患の有無の交絡因子を用いた。
3年間の追跡期間中、新たに抑うつ症状を発症した高齢者は8,875人のうち11.5%であった。また、2013年に歯数が20本以上の高齢者5,333人のうち抑うつ症状を発症した人は9.2%(699人)、19本以下の高齢者3,542人のうち13.1%(325人)だった。
また、「うまく話せない」が12.4%、「歯を見せて笑うのをためらう」が16.9%、「咀嚼困難な食べ物がある」が21.9%だった。
因果媒介分析の結果、歯が19本以下の高齢者は20本以上の高齢者より抑うつ発症リスクが1.30倍高いことが分かった。
(画像はプレスリリースより)

東北大学のプレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/別掲
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