うつ病の原因遺伝子を発見
学校法人慈恵大学は6月12日、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授の研究グループがうつ病の原因遺伝子を発見し、研究論文がiScience誌(Cell Press)に掲載されたと発表した。
原因遺伝子はSITH-1
うつ病の原因を特定するため世界規模の染色体の遺伝子(ヒトゲノム)の研究が行われているが、多くの関連遺伝子は見出されたものの決定的な原因遺伝子は発見されていない。
研究グループは、研究対象をヒトゲノムからヒトと共生する細菌やウイルスなどを含む遺伝子(メタゲノム)に広げた。ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の遺伝子SITH-1が、うつ病を発症させることを発見した。
HHV-6は小児期に感染し、ほぼ100%のヒトに潜伏感染している。唾液中に最も多く存在し、鼻腔から脳の「嗅球」に侵入して潜伏感染する。研究グループは、試験管内の培養細胞を使った実験で、嗅球のHHV-6からSITH-1遺伝子と159アミノ酸からなるSITH-1タンパク質を産生していることを見出した。
SITH-1は、脳のストレスを亢進させてうつ病を発症させ、軽いうつ症状にも影響していた。非常に効果の大きい原因遺伝子で、ヒトを12.2倍うつ病になりやすくさせ、79.8%のうつ病患者が影響を受けていることが分かった。
また、血清中の抗体検査からSITH-1の発現を検出する方法も開発した。この方法を用いれば、血液検査を行うことで、うつ病の早期発見や発症前のうつ病になりやすい人を判定できると期待される。
(画像はプレスリリースより)

学校法人慈恵大学のプレスリリース
http://www.jikei.ac.jp/別掲(日本語による解説)
http://jikeivirus.jp/